対象疾患・治療法

上部消化管グループ

当科における食道疾患治療

食道がん

当科で行う食道がんに対する手術は,腹臥位(うつ伏せ)の状態で胸の中を操作する胸腔鏡(小さな創から内視鏡で見ながら,細いマジックハンドのような器具を用いる)手術を標準術式としています.当術式を開始して10年以上たち,胸腔鏡手術の長所も注意点も明らかとなってきました.長所は小さな創で治療するため,開胸(約10~30㎝の創から直接見ながら行う)手術と比較して術後の痛みが少なく,肺への負担が軽減することで術後の様々な合併症が少なくなることです.一方,胸腔鏡手術においても術後合併症の一つである反回神経麻痺(声帯を動かす神経のマヒ)の発生率は約20%と決して低くない発生率でした.そこで,当院では2020年より縦隔鏡(左の頸部から小さな創で食道が存在する縦隔内を操作する)手術を導入しました.この縦隔鏡手術と胸腔鏡手術を合わせたハイブリット手術によって,胸腔鏡手術で特に困難とされる左反回神経の周りを比較的容易に操作することができるようになり,その結果,当院のデータでは左反回神経麻痺の合併症発生率を約5%まで抑えることができました.

また,食道を取り除いたあとに食事の通る道を作る食道再建術の際,胃を細長くした胃管(いかん)を用います.従来,この操作は開腹(約10~25㎝の創から行う)手術で行われてきましたが,胸および頸部から行う手術の低侵襲化に伴い,腹部の操作も小さな創で操作する腹腔鏡手術を導入しました.その結果,左頸部に約3㎝の切開創と胸部に約1cmの創が5か所,さらに腹部に約1㎝の創が5か所と,患者さんの体に優しい手術を行うことができるようになりました.

本術式が従来から行ってきた開胸および開腹術と同等の根治性を備えていることの検証を行い,さらに縫合不全(食道と胃管を縫い合わせたところから唾液や食事が漏れてしまうこと)や反回神経麻痺などの術後合併症の軽減に努めています.近年,当院でも本格的に3Dハイビジョンシステム,ロボット支援下の食道がん手術を導入しました.さらなる食道がん治療の精緻化が進められると期待しています.

以前、現在

食道良性疾患

食道粘膜下腫瘍(平滑筋腫,消化管間質性腫瘍:GISTなど)

食道の粘膜の下に発生する腫瘍です.良性腫瘍でも嚥下困難(食べたものを飲み込みづらい)や腫瘍からの出血がある場合も外科的治療の適応となります.がんと異なり,食道を切除する必要性は少なく,胸腔鏡手術で腫瘍だけを切除します.時に,腫瘍のサイズが大きく,やむを得ず食道切除を行う症例もまれにあります.胸部に位置するすべての腫瘍が手術の前に診断できるわけではなく,呼吸器外科と合同で診断学的治療(良性か悪性か判断できない腫瘍を切除することで診断および治療を行う)目的で腫瘍を切除することもあります.

食粘膜下腫瘍、食道亜全摘を要した巨大腫瘍

特発性食道破裂(Boerhaave症候群)

大量飲酒後の繰り返す嘔吐に続く激烈な心窩部痛や胸背部痛で発症し,適切な対応が遅れると全身状態が急速に悪化して死に至る疾患です.嘔吐する際に食道内の圧が上昇することで,食道の中でも比較的脆弱な下部食道の左側まれに中部食道の右側が破裂します.従来,緊急開胸手術で行われてきた救急疾患ですが,近年は胸腔鏡あるいは腹腔鏡手術で治療を行っています.ときに命を左右する疾患ですので,救命を第一優先として患者さまの負担が少ない究極の治療を追求しています.

特発性食道破裂

食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎に対して,従来はプロトンポンプ阻害剤の内服治療が中心でしたが,誤嚥性肺炎を繰り返すGERD(胃食道逆流症),NARD(非びらん性胃食道逆流症)といった複雑な病態,巨大食道裂孔ヘルニアなど手術治療が必要な患者さんが増えてきました.この様な病態に対して,腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復・逆流防止手術を行っています.

当院では,食道外科専門医や食道認定医に加えて,日本内視鏡外科学会が認めた内視鏡外科技術認定およびロボット手術certification(認定書)を有する医師が治療にあたります.消化器疾患のなかでも比較的難易度の高い食道疾患に対する外科治療においては,今後も高い水準をめざし,徹底した情報の提供と合意による,患者さんが納得出来る医療を提供していきたいと考えています.

胃がん

胃がんの治療は,病気の進行度(ステージ)によって変わります.進行度は,がんは粘膜から発生し壁の外に向かって深く発育(壁深達度),リンパ管に沿った転移(リンパ節転移),血管に沿った転移(遠隔転移),もしくは腹腔内(ふくくうない)にがん細胞が直接こぼれて広がる腹膜播種(ふくまくはしゅ)の有無により決まります.転移がなく,粘膜内の比較的小さいがん(ステージⅠA)であれば内視鏡で削り取る(内視鏡的粘膜下層剥離術:Endoscopic Submucosal Dissection)ことができます.逆に,肝臓や肺,骨や脳などへの遠隔転移があるステージⅣの場合,リンパ管に沿った転移でも胃から遠い場所まで広がったリンパ節転移,また腹膜播種がある場合には特別な理由(出血がつづいている,食べ物が通過できないなど)を除いて抗がん剤治療の適応となります.

われわれ胃外科医は,『内視鏡で削り取ることはできないけど,遠隔転移や腹膜播種がなく身体の中からがんを肉眼的に無くすこと(根治)ができる』症例を治療します.手術の方法は腹腔鏡(小さな創から内視鏡で見ながら,細いマジックハンドのような器具を用いる)や腹腔鏡よりさらに微細な操作が可能となった手術支援ロボットを用いた低侵襲手術を中心に行っています.このロボット支援手術は,既存の手術法と比較した研究が多くなされています.近年,小さな創で行う腹腔鏡手術と比較しても術後合併症の発症が少ないことが判明し,さらにがんが再発・転移する割合が少ないことも分かりました.これらは複数の手術補助機能を統合して開発されたロボットが,術者の遠隔操作により精密で安定した動きによりストレスが少なく,より複雑で細やかな手術手技を可能にしたこと,また3次元による正確な画像情報を取得できるためより安全かつ侵襲の少ない手術を可能にした結果と考えられます.

胃がん
胃がん手術症例

『ロボット支援手術はどのような治療?』『他の病院では腹腔鏡で手術すると言われたけどロボット支援手術でできるの?』など,手術方法はもちろんのこと,胃がん治療で何かわからないことや相談したいことがある場合は,経験豊富なスタッフが時間をかけてお話を聞きますので御気軽に外来を受診してください.

胃粘膜下腫瘍(消化管間質性腫瘍:GIST)

胃粘膜下腫瘍は,しばしば健康診断の上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で指摘される粘膜の下に発生する腫瘍をいいます.潰瘍(表面がけずれている)や出血などの症状がなく,まわりの粘膜との境界がはっきりしている場合には大きさが2㎝未満であれば経過観察となります.しかし,超音波内視鏡検査にて腫瘍に対して細い針を刺し,腫瘍細胞を回収する超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA:Endocopic Ultrrasound-Fine Needle Aspiration)で消化管間質腫瘍(GIST: Gastrointestinal Stromal Tumor)と診断されれば2cm未満で症状がなくても外科的切除が勧められます.2㎝以上に大きくなり,検査しても良性か悪性か判断できない場合でも,診断目的で腫瘍を外科的切除することもあります(診断学的治療).

近年,腹腔鏡技術の進歩により10cm以上の大きな開腹創の手術を行わなくても,小さな創で患者様の負担が少ない腹腔鏡手術により治療することができるようになりました.さらに当科では,外科的治療だけで切除するよりも胃の切除範囲をさらに小さくする腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS:Laparoscopic Endoscopic Cooperative Surgery)を行っています.消化器内科の先生による内視鏡手術と外科医による腹腔鏡下胃局所切除の合同手術で,胃の中と外から腫瘍の範囲を正確に見定めることにより無駄な切除を防ぐ治療法です.胃の変形が最小限で済み,胃の機能をほとんど損なうことなく治療することができます.

当院では,日本消化器内視鏡学会の専門医,日本内視鏡外科学会が認めた内視鏡外科技術認定およびロボット手術certification(認定書)を有する医師がこれらの低侵襲治療にあたります.日本医科大学の学是でもある 克己殉公:『わが身を捨てて,広く人々のために尽くす』の精神を常に持ちながら,多職種との連携を大切にし,患者様自身そしてご家族の意思を尊重して最善な治療を提供していきたいと考えています.


肝胆膵グループ

肝悪性疾患

原発性肝癌(肝臓癌)

肝臓から発生した癌です。肝細胞に由来する肝細胞癌と肝内胆管に由来する肝内胆管癌(胆管細胞癌)が代表的な疾患です。頻度は肝細胞癌が全体のおよそ95%を占め、肝内胆管癌は4.5%と稀で、一般的に肝癌といえばこの肝細胞癌を示します。切除可能な場合は手術を行うことが推奨されています。肝予備能や切除後の肝容積、腫瘍の大きさや位置に応じて、肝臓の切除範囲や、どのような方法(開腹手術や腹腔鏡手術)で手術するかなど、適切な手術方法を検討します。また、初発例だけでなく、再発症例においても積極的に肝切除を行っております。特に腹腔鏡下再肝切除術は、拡大視効果によって、狭い空間でのピンポイント手術も可能であり腹腔内(おなかの中)において、前回手術の癒着を必要以上に剥がす必要がなく、また整容面でも優れており、身体への負担を減らせるものと考えています。

転移性肝癌(肝転移)

転移性肝癌は、肝腫瘍の中で最も頻度が高い腫瘍です。他臓器癌が肝臓に転移したものを転移性肝癌といいます。特に、大腸(直腸、結腸)癌が切除の対象となる代表的なものです。肝切除の対象となるものは、
1. 安全な肝切除量の範囲内で転移巣が切除できること。
2. 原発巣を含めた他臓器病変が抗がん剤を含めた治療で制御可能であること。

最近では、根治切除が難しいと考えられる大腸癌の多発肝転移症例に対して、様々な抗癌剤に分子標的薬を併用して複数回に分けて肝切除を行うなど、集学的治療で症例ごとに適切な治療方法を考えています。また、腎癌や膵内分泌腫瘍の肝転移症例も切除の対象となる場合もあり、切除が望ましいとされる症例には、可能な限り肝切除を行っております。
他院で切除が難しいと判断された方もご相談ください。

胆道癌

胆管とは、肝臓で作られた胆汁(消化液の一種)を十二指腸まで流すための管で、その途中に胆嚢があります。これら全体を胆道(たんどう)と呼びます。胆管が肝臓から出たところから始まり、十二指腸にある胆管開口部(十二指腸乳頭といいます)までを指します。 
胆道がんには、胆管がん、胆嚢がん、乳頭部がんの3種類があります。
胆道(胆管や胆嚢)に発生した癌のうち、胆嚢にできた胆嚢癌や肝臓に近い胆管にできた肝門部領域胆管癌が肝切除の必要な代表的な疾患となります。手術は、肝臓と胆管を含めた切除、切除した胆管と消化管を繋ぐ(吻合)ことが行われ、その術式には多くのバリエーションがあります。大きな手術になることがあるため、安全面を第一に、術前の入念な準備と術後管理を行っています。肝門部領域胆管癌では肝容積の60%以上の大量肝切除が必要になるケースもあるため、術前に門脈塞栓術を施行し、残す側の肝容積を大きくし、術後の肝不全に代表される重篤な合併症を回避し、安全に行えるようにしています。
また胆道癌は切除不能例をあり、QOLを重視した胆管ステント治療や、放射線療法、化学療法を消化器内科の専門医と連携して積極的に実施しています。

(注2  3D画像解析システム

肝良性疾患

肝嚢胞

症状を有する肝嚢胞に対する治療を行っています。肝臓の中に袋状に水が溜たまる病気で、多発し巨大化することがあります。大きなものは、周囲臓器を圧迫することで、腹部の膨満感や痛みなどの症状が出る場合があります。また、嚢胞内出血や感染合併例も治療の適応です。我々は、腹腔鏡下肝嚢胞切開術を積極的に行っています。是非、ご相談ください。

良性肝腫瘍

癌化しない良性肝腫瘍でも切除の対象となるものがあります。
代表的な疾患として肝血管腫があります。肝血管腫は巨大化するものや腫瘍内出血によって血小板減少など呈することがあります。特に、大きくなると周囲臓器や肝内脈管を圧排することで腹部膨満や腹痛などの症状や肝機能障害を招くことがあります。その他にも、限局性結節性過形成(FNH)や血管筋脂肪種などの肝細胞癌との鑑別が困難な腫瘍もあります。確定診断のつかない肝腫瘍などもご相談ください。

胆道(胆嚢、胆管)

胆道系疾患とは、肝臓から十二指腸を繋ぐ肝外胆管と胆嚢より発生する疾患です。具体的には良性疾患として、胆石症(胆嚢結石、総胆管結石)や胆嚢ポリープ、胆嚢炎、胆管炎など、悪性疾患として胆嚢癌、胆管癌が主なものとなります(前述)。
胆嚢結石症は、右季肋部痛(胆石発作)や発熱などで救急搬送される疾患でもあります。当院では、素早い対応ものと、なるべく早期に腹腔鏡手術で行なっております。
総胆管結石に対しては、腹腔鏡手術のほかに内視鏡(注3による治療(乳頭切開、砕石)も行なっております。
閉塞性黄疸や胆管狭窄、拡張などの異常は、診断も行いますので、早期の治療介入が出来ます。お気軽にご相談ください。

膵癌(浸潤性膵管癌、invasive ductal carcinoma)

浸潤性膵管癌が通常型膵癌、いわゆる膵癌です。膵癌とは膵臓から発生した悪性腫瘍のことを指しますが、一般には膵管癌のことを言います。膵管癌は膵管上皮から発生し、膵臓にできる腫瘍性病変の80-90%を占めています。
膵癌は治療が困難な予後不良な癌といわれています。膵癌のスクリーニング法は確立されておらず、早期診断は困難とされています。特定の自覚症状に乏しく、腹痛、背部痛、体重減少、食欲低下、黄疸、特に近年では糖尿病の悪化などを契機に発見されることが多いとされており、膵癌患者数は年々増加傾向であります。 高度進行例で主要血管に接するような進行した膵癌に対しては化学療法を行った後に血管合併切除を伴う手術を行っています。一部の尾側膵癌に対しては低侵襲である腹腔鏡下手術や最近ではロボット支援下(ダヴィンチ)を導入し施行しています。患者さんの病状に応じて拡大手術から低侵襲手術までを安全に行っています。

ロボット支援下膵体尾部切除の術中風景

膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary neoplasm 、IPMN)

壮年~高年男性に好発する腫瘍です。IPMNは、当初は良性の膵管内乳頭粘液性腺腫ですが、時間経過とともに、膵管内乳頭粘液性癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍由来浸潤癌と変化していきます。主膵管型,分枝型に分類されます。症状のあるもの、悪性所見を認めるものは切除すべきと推奨されています。
外科的切除の方法ですが、膵頭部側(十二指腸側)の腫瘍は膵頭十二指腸切除を施行しています。膵尾側(脾臓側)の浸潤癌の場合は、通常型膵癌と同じく郭清を伴う膵尾側切除を行っており、低侵襲で整容性にも優れた腹腔鏡下膵体尾側切除や最近ではロボット支援下膵体尾部切除でも行っております。術式の適応・選択については外科、肝胆膵外科専門医にお聞きください。IPMNは、経過観察を行う場合には本腫瘍の悪性化だけではなく膵癌の発症に注意する必要があり、定期的に外来に通院して頂きます。

粘液性のう胞腫瘍(Mucinous cystic neoplasm、MCN)

中高年女性,膵体尾部に好発する腫瘍です。原則切除が推奨されます。癌の頻度は低く、腹腔鏡下手術の良い適応となります。

神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor; NET)

消化管や内分泌組織に広く分布する神経内分泌細胞由来の腫瘍です。膵臓では膵ランゲルハンス島と呼ばれる部分から様々なホルモンが産生されています。膵ランゲルハンス島細胞由来の腫瘍が膵内分泌腫瘍です。インシュリンを産生するインシュリノーマ、ガストリンを産生するガストリノーマ、グルカンゴンを産生するグルカンゴノーマ、ソマトスタチンを産生するソマトスタチノーマなど、ホルモンによる症状を起こす症候性膵島腫瘍と、ホルモンによる症状を起こさない無症候性膵島腫瘍が有ります。無症候性膵島腫瘍には、非機能性膵内分泌腫瘍も含まれます。進行は比較的穏やかですが、急激に進行するものもあり、注意が必要で、早期段階での手術が有効な場合があります。膵NETの年間初診数は人口10万人あたり2.7人と稀な疾患です。また多発性内分泌腫瘍症(MEN)に合併する場合もあり、全身検索も必要です。

充実性偽乳頭状腫瘍(Solid pseudopapillary neoplasm、SPN)

若年女性,膵体尾部に好発する腫瘍です。悪性化を認めることがあり、原則切除が推奨されます.腹腔鏡下手術やロボット支援下手術のよい適応となります。

漿液性のう胞腫瘍(Serous cystic neoplasm、SCN)

中高年の膵体尾部に好発する腫瘍です。ほとんどが良性腫瘍であり,手術適応は腫瘍圧排による症状を有する場合や主膵管に変化を認める場合、腫瘍が大きい場合や増大をきたす場合です。


下部消化管グループ

大腸がん治療について

1) 腹腔鏡手術

腹腔鏡手術は開腹術と比べて、創が目立たない、痛みが少ない、出血量が少ない、術後腸閉塞になりにくい、早期に社会復帰が可能であるなど、患者さまにとって利点の多い術式です。本邦における大腸がん手術は約80%が腹腔鏡で行われています。当科では巨大な腫瘍や他臓器浸潤を伴う腫瘍を除いた全症例を腹腔鏡手術の適応としており、その割合は約90%となっています。経過が順調であれば術後約1週間で自宅に退院することができます。

腹腔鏡
腹腔鏡
開腹
開腹
腹腔鏡手術の手術風景
腹腔鏡手術の手術風景

2) ロボット手術

ロボット手術では、3Dによる高精細な画像、約10倍の拡大視効果、鉗子の多関節機能、手ぶれ防止機能、モーションスケール機能などにより、開腹手術や腹腔鏡手術の欠点を補いより精密な手術が可能となります。

ロボット支援下直腸切除の術中風景

大腸がんにおけるロボット手術は、2018年に直腸がん、2022年に結腸がんに対して保険適応となり、飛躍的に症例数が増加しています。当院では病院新築移転に伴い、2022年6月にロボット手術支援機器(da Vinci)が導入され、2022年8月より直腸がん、2023年7月より結腸がんに対してロボット手術を開始しています。

3) TaTME(経肛門的直腸間膜切除術)

肛門側からも腹腔鏡でアプローチするTaTME(経肛門的直腸間膜切除術)を行っています。腹腔側から直線的な鉗子で届かない部分にも肛門側から容易にアプローチすることができます。それにより大きな腫瘍や骨盤の狭い方などに、開腹術を行うことなく手術をすることができます。

4)術前化学放射線療法(TNT)

局所進行直腸がんに対し術前に短期間の放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせることにより、切除不能な腫瘍が縮小して切除可能になることもあります。 また、術後の再発率を低下させ転移の予防にも有効な治療として術前化学放射線療法(TNT)を行っています。現在直腸がんの術前治療として最も成績が良いとされ、場合によっては腫瘍が消失することもあります。この治療により永久人工肛門を避けることができる場合があります。

5)大腸がん手術数(開腹vs腹腔鏡vsロボット)

下部消化管グループでは、年間80〜100例の大腸がん手術を行っています。経年的に手術数は増加し、今年は昨年を上回るペースで大腸がん手術を行なっています。またロボット大腸がん手術数も増加しています。

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